LOGINどうしよう。
ヴァルド君がメッセージを送ってきた。
しかも動画つきで。
動画のヴァルド君は妙に真剣だった。
あのジャージを着ている。
動画では筋トレをしているヴァルド君が映っていた。
わかりやすく、どうすればいいのか説明されていて、本当に初心者向けだった。
丁寧で優しい。
ヴァルド君の人柄なのかも。
いい人なんだな。
こんなに頑張った動画を送ってくれたんだもの。
これ、やらないといけないよね。
ただ、動画のヴァルド君は無駄に爽やかだった。
何で筋トレ部なんだろう。
やりすぎて頭まで筋肉にならないかしら。
少しだけ心配してしまった。
私はユリアの部屋をノックした。
「ユリア、助けてー」
「何?」
「私、筋トレ部の対応で忙しいんだけど」
「どうしたの?」
「ユウ、女装かわいくね?」
「惜しいけど良い感じだ」
送られてきたメッセージを見て、ユリアが固まった。
「……」
「これ、どう思う?」
「惜しいってどういうことなの?」
「私のかわいらしさの最大値を更新しろってこと?」
「目をもう少し盛れってこと?」
「いや、待って」
「輪郭?」
「メイク不足?」
ユリアは真剣だった。
「何が惜しいのかしら……」
少し考え込む。
「わかったわ」
「服が少しかわいくなかったのね?」
「今度は決めて見せる!」
「あんたたち、壊してやる!」
ユリアは拳を握った。
「女の子にしか見えないって言わせてやるから!」
何かが間違っていた。
そして。
今回はいけるでしょ、と言いながらユリアが写真を送る。
すると。
「惜しい」
「かなり完成度高い」
「でも男なんだよな」
筋トレ部がそんな感想を返してきた。
一方ユリア。
(何で!?)
筋トレ部は真剣だった。
「顔は完全に女」
「雰囲気も女」
「でも何か男」
「オーラだな」
「仕草ももう少し」
「それに、ない」
「だから男」
意味がわからない。
しかし、ユリアは結論を出した。
これは仕草よ!
いけるわ!
ガサツっぽく見えたのね!
ユリアの女装を究めることが、いつの間にか筋トレ部の楽しみになっていた。
「ユウ頑張れ!」
皆が応援している。
「次はもっと完璧にしてやるわ」
「胸を盛る?」
「いや、胸はあるわ」
「そんなに小さくないもの」
「何も問題ない」
「オーラかしら」
私は思った。
本物なのに、何を勝負してるの?
私は、とりあえず筋トレをしてみた。
筋トレは意外と悪くなかった。
結構面白いし、毎日やるのもありかもしれない。
これって実は胸が大きくなるとか?
ありえる!
きっと、小さいから誤解したのよ。
仕方ないでしょ。
小さくするために潰してたんだから。
一応、それなりにはあるのに。
私は胸がない方じゃない。
運動したいし、大きいのは少し恥ずかしいから、普段から小さく見えるようにしていた。
揺れると動きにくいし、男子校へ行くことになったのもある。
顔立ちは男の子っぽい。
背も高いし、筋肉もある方だ。
だから女子校でも王子みたいって言われる。
でも。
「胸がないから女の子じゃない」
そう言われたみたいで、少しだけ悔しかった。
私はヴァルド君へメッセージを送った。
『筋トレやったよ』
『ありがとう』
『結構効くね』
すると、すぐに返事が来た。
『それなら良かった』
『アルには健康になってほしいからさ』
『俺、毎日連絡する』
『少しずつ頑張ろうな』
ヴァルド君って優しい。
ちょっと嬉しかった。
『明日も来るだろ?』
私は少し悩んでから返した。
『明日は行けないんだ』
『学校変わるんだよ』
『え? そうなの?』
『うん』
少し間が空く。
『まさか……隣の学校?』
私は少し驚いた。
(なんだ……女だってわかってくれたんだ)
『そうそう』
一方ヴァルド君。
(隣の男子校のほうが病院に近いからか?)
完全に勘違いしていた。
『休みの日とかなら会えるよな』
『隣でもさ』
『俺、遊びに行くよ』
『筋トレとか教えてやりたいし』
『嬉しい』
***
俺は嬉しかった。
俺の動画も見てくれた。
それに喜んでくれた。
アルは優しいし、真面目だ。
やっぱり仲良くなれて良かった。
アルの健康のために協力してあげたい。
それは嘘じゃない。
でも、それだけじゃなくて。
俺もアルと話すことで幸せな気持ちになっている気がした。
よくわからないけど。
ただ、まだ会ったばかりなのに、もう会いたくなっている俺がいた。
何でだろう。
やっぱりアルは王子だからかもしれない。
俺達とは違う別世界の住人って感じだ。
浄化されるのかもしれない。
でも、筋トレパワーが身についてないから、やっぱりアルには必要だ。
あの体に筋トレが身につけば健康になる。
それだけで十分だ。
もう少し男らしくなって、しっかりすれば俺としても安心できる。
プロテインが必要だな。
今度あげようかな。
だいたいアルは全部が柔らかくて女の子みたいだ。
それでは王子というより姫になってしまう。
だめだろう。
だから、やっぱり鍛えないといけないよな。
よし。
今からアルに教える筋トレメニューを考えるぞ。
胸板だけじゃない。
他のバランスも考えないとな。
ストレッチも必要かもしれない。
まずは初心者向けから考えてみよう。
どうしよう。 ヴァルド君がメッセージを送ってきた。 しかも動画つきで。 動画のヴァルド君は妙に真剣だった。 あのジャージを着ている。 動画では筋トレをしているヴァルド君が映っていた。 わかりやすく、どうすればいいのか説明されていて、本当に初心者向けだった。 丁寧で優しい。 ヴァルド君の人柄なのかも。 いい人なんだな。 こんなに頑張った動画を送ってくれたんだもの。 これ、やらないといけないよね。 ただ、動画のヴァルド君は無駄に爽やかだった。 何で筋トレ部なんだろう。 やりすぎて頭まで筋肉にならないかしら。 少しだけ心配してしまった。 私はユリアの部屋をノックした。「ユリア、助けてー」「何?」「私、筋トレ部の対応で忙しいんだけど」「どうしたの?」「ユウ、女装かわいくね?」「惜しいけど良い感じだ」 送られてきたメッセージを見て、ユリアが固まった。「……」「これ、どう思う?」「惜しいってどういうことなの?」「私のかわいらしさの最大値を更新しろってこと?」「目をもう少し盛れってこと?」「いや、待って」「輪郭?」「メイク不足?」 ユリアは真剣だった。「何が惜しいのかしら……」 少し考え込む。「わかったわ」「服が少しかわいくなかったのね?」「今度は決めて見せる!」「あんたたち、壊してやる!」 ユリアは拳を握った。「女の子にしか見えないって言わせてやるから!」 何かが間違っていた。 そして。 今回はいけるでしょ、と言いながらユリアが写真を送る。 すると。「惜しい」
俺は、いつものように筋トレ部で筋トレをしていた。 その時だった。 ものすごい美少年が歩いていた。 王子かと思った。 それがアルだった。 そして、その隣にいたのが、かわいい顔をした男――ユウだった。 アルは初めて見る顔だ。 あんなに目立つ美少年なら、見たことがないのがおかしい。 転校生か? 見学か? よくわからない。 ただ――アルは妙に華奢だった。 細い。 柔らかそう。 しかも、何か落ち着いていて、本当に王子みたいだった。「あいつ……別格だろ」「絶対に王子だ」「あれで筋肉があったら……」「惜しいな」「あれで筋肉ついたら完成じゃね?」「いや、今のままだと病気になるだろ」「守ってやらないと駄目なタイプだ」「あ……もしかして、俺たちに助けを求めているんじゃないのか?」 俺たちは察した。 きっと――筋肉が欲しいんだ。 恥ずかしくて言えないだけだろ? わかる。 わかるぞ。 だから。 クリスが話しかけた。「そこの美少年達、筋トレ部に用か? よかったら筋トレしよう」(その誘い方はないだろ)(恥ずかしいからやめろ) 筋トレ部全員が思った。 だが。 俺は、やっぱりアルが気になった。 あまりにも細い。 胸板なんて柔らかそうで。 大丈夫かと思って、俺は触った。 ものすごく柔らかかった。 一瞬、女の子なのか? って思うくらいに。 でも。 男だよな。 王子みたいだけど。 きっと筋肉が足りないだけだ。 あいつ病気になるぞ。 身長はそれなりにある。 で
私はセラフィア女学院に通っている。私達は健康促進部に入っている。 体調管理やダイエットを目的とした部活だ。まあ、ほとんどの生徒が入っているし、私もバスケ部と掛け持ちしていた。ある日、部長達から妙な任務を言い渡された。男子はどうやって筋トレをしているのか。どういう女の子が人気なのか。何を求めているのか。そういうものを調べてきてほしいらしい。だから私は、男のふりをして男子校へ潜入することになった。理由は単純だ。身長が高いから。ショートカットだから。王子っぽいから。そんな理由である。ちなみに友達のユリアも選ばれた。胸がないから。そして荒っぽいからだと思う。皆、酷いな。私は胸がないわけじゃない。ただ、運動すると邪魔だし恥ずかしいので、できるだけ小さく見せているだけだ。その成果もあってか、男子校へ潜入しろと言われた。そんな馬鹿なと思った。ユリアは気づいていないけど、私は男子校に行ったことがない。少しだけ緊張していた。そして先生達に男子校の制服を借りた。顧問の先生は面白がって貸してくれたらしい。何を考えているのかわからない。私は着替えてみた。「アル、似合う」「王子様みたい」「絶対モテる」「男子校に行くのがもったいない」皆が好き勝手言っていた。そんな馬鹿な。私達は潜入捜査を開始した。女子校の人気ランキングはわかった。たぶん、男子達が今まで見た女子の人気ランキングなんだろう。それだけはわかった。そして帰ろうとした、その時だった。「やはり、ここの筋肉をつけるためには、このトレーニングじゃないのか?」「いや、プロテイン量が足りないだろ」







